お客様 : 九州大学水素利用技術研究センター 様
キーワード : ブリスタ 水素曝露 ゴムの開発支援 ゴムの提案型営業
営業部の齋藤です。
前回まで、問合せ(№1)と見積依頼(№2)と試験片作成(№3)のお話をしました。
今回は試験結果のお話をします。
解説して下さいました
初回納品から数ヶ月後、西村先生のご厚意で来社して試験結果の解説をして下さいました。
試験片をお願いするからには内容を話して理解してもらった上で作ってもらった方がいい、という西村先生のお考えからでした。
これは私たちとしましても大変ありがたいことでした。
「いったいなんに使われるのか」「納品した試験片はどうなったのか」などやはり気にかかるものです。
また内容をお話しいただくことでゴム屋なりのご提案もできるかもしれません。
そういった意味でも詳細を教えていただくことはお互いにプラスであると考えています。
おもしろい案件
「おもしろい案件」について以前お話をしました。
形状や材料もさることながら、それがいったい何に使われるのかというエッセンスも含まれます。
私たちはゴム屋ですので、それ以外のことは一般知識程度にしかわかりません。
お問い合わせいただくお客様は様々で、知らない分野がたくさんあります。
じつはそういったお話を聞かせていただくことも「おもしろい案件」と感じる一因になります。
社長の言う「おもしろいねー」「わくわくするねー」というコメントも、「こんな用途で使うらしいですよ」と報告するところから生まれます。
特筆すべきはそういった案件を「これは無理だろう」ではなく「こりゃおもろそうだな」と入っていける社風にあると思います。
試験結果
さて、解説して下さった試験結果です。
写真に載っているのがブリスタ現象です。
試験片はφ29×t12.6の円筒ブロックで、材料はEPDMのカーボンブラックが入っている配合と入っていない配合です。
そして上段が圧力10MPaの水素ガス中に曝露した後の状態、下段が圧力100MPaの水素ガス中に曝露した後の状態です。
試験片は、高圧水素に曝露されると内部に水素の侵入を受けます。
そのあと急速に大気圧まで減圧すると、写真に示したようにブリスタと呼ばれるゴムの破壊現象が起きます。
ブリスタ現象
これを見るまでブリスタ現象というものを知りませんでした。
それにゴムがこんな状態になるのも初めて見ました。
私たちが普段目にするのは、油に膨れたり水でぼろぼろになったもので、ここまで破壊された状態は衝撃的でした。
また、カーボンブラックが入っているEPDMと入っていないEPDMで破壊のされ方が違うのにもびっくりしました。
ゴム屋としてはただただびっくりするだけですので、詳細は論文にまかせます。
以下の参考文献を参照してください↓
「10MPa水素ガス中で曝露したエチレンプロピレンゴムの水素侵入特性とブリスタ破壊に及ぼす充てん剤の影響」
山辺 純一郎、中尾 匡利、藤原 広匡、西村 伸
日本機械学会論文集 2008年7月号(第74巻第743号)A編 (材料力学、材料など) 971ページ
解説を受けて
さて、解説をしていただいた感想は、ただただびっくりするばかりでした。
自分たちが納めた試験片がこういったことに使われていることへの驚きと、最先端の話への驚きとで、ただうなずくばかりでした。
と同時に見たことも聞いたこともない話に、ずいぶん引き込まれました。
そういった意味でもゴムの開発支援ということが私たちにはしっくりきます。
ゴムの開発支援
お問い合わせいただくお客様の内容は、私たちの知らない分野がほとんどです。
これから開発しようというお話ですので、分からないことがほとんどといっていいくらいです。
ですのでじっくりゆっくり話を聞きます。
分からない単語も出てくるのでその都度聞いて解説してもらいます。
そういった中でお客様の「つくりたい」を聞き出していきます。
ゴムの提案型営業
私たちの仕事はそのお客様の「つくりたい」を「カタチ」にすることです。
お客様がその分野の専門家なら私たちはゴムの専門家です。
私たちは聞き取りを元に、現実的で実現可能な方法を考えます。
そして、可能な選択肢を提案します。
これが私たちの提案型営業です。
実は勉強させてもらっている
かっこいいことを言っていますが、実は勉強させてもらっているんですね。
こういうことを通じて見聞を広め、新しい分野を知り、知識を高めています。
「おもしろい案件」で楽しい仕事をして勉強させてもらっています。
ありがたいことです。
次の案件
九州大学水素利用技術研究センター様の水素曝露用試験片は、その後も続き今も('09.4)お付き合いさせていただいております。
次々に持ち込まれる「こんなことできませんか」という相談をいつも楽しみにしています。
これまでに数十種類の材料、十数種類の形状、実に様々なものを作りました。
残念ながらまだ公開されていないのでお話しすることはできませんが、いずれまたまとめてお話したいと思います。
計4回にわたってお話ししました水素曝露試験片ゴム試験片はこれでひとまず終わりです。
次回もお楽しみに。
営業部 齋藤
お客様 : 九州大学水素利用技術研究センター 様
キーワード : 配合 混練り 分出し 裁断 成形 仕上げ 検査 梱包 納品 ブリスタ破壊
営業部の斉藤です。
前回まで、問合せと見積依頼のお話をしました。
今回は試験片製作のお話をします。
正式注文がきた
御見積書を提出して3週間後、正式注文が来ました。
私たちとしましても注文書をいただかないと動けないので、心の準備はしといて今か今かと待っていました。
私は営業なので、注文書を受け取ると「仕事をもらった!」と実感し、嬉しくなります。
今回は試験片のボリュームとしては多いので、喜びはひとしおでした。
製作依頼を出す
わが社の場合、受注後の製作依頼は営業部の仕事です。
製造部には成形の依頼、技術部には材料の依頼を出します。
通常量産品の場合、製品の形状・材料は最初に登録するので、2回目からはお客様からご注文をいただくと決められた工程をふんで納品されます。
それが試作品になると、一つ一つ指示を出さないといけません。
技術部に材料の依頼
今回の場合まず材料の手配を技術部に依頼しました。
材料の配合は西村先生からの指定なので、配合表をそのまま技術部に送りました。
全部で4種類なのでそれぞれに番号を振り、区別をしました。
製造部に成形の依頼
試験片は4種類なので、それぞれに成形依頼を出しました。
① 平角150㎜×150㎜×2㎜
自社の金型があるのでそのまま製作依頼を出しました。
② ダンベル1号
2㎜のシートから抜くので①と同じ依頼+ダンベル1号で抜く依頼を出しました。
③ 短冊2㎜×1㎜×60
1㎜のシートからカットするので平角150㎜×150㎜×1㎜の製作依頼
+2㎜×60㎜の加工依頼(こちらは外部に委託)を出しました。
④ φ29×t12.6
厚さ20㎜くらいの方形もしくは円形ということでしたので、圧縮永久歪試験に使用するブロック(φ29×t12.6)を流用する取り決めになっていました。
これも金型があるのでそのまま製作依頼を出しました。
いざ成形工程へ
一安心
納品が終わると一安心します。
今回は初めてのことでもあるので納期は長い目にもらっていました。
ですので余裕をもって納品することができました。
勝手が違う
とはいうものの、試験片を納めるということは通常の量産品の工程こそ同じでも内容は全く違うものでした。
特に勝手が違ったのは検査工程でした。
今回の成形品の形状はすべて技術部が物性試験に使用するものばかりでした。
日頃は技術部で成形し物性試験をするので、製造部には流れてこない形状です。
つまり、製造部の工程でそのような形状が流れてくることが初めてだったわけです。
しかも部品としてではなく試験をするためのテストピースなので、完成品のタイプが全く変わってきます。
サンプル送って確認してもらいました
引張試験に用いるダンベルや、短冊についてはシートからの加工であり、JIS規格もあるので、問題はありませんでした。
ところが平角や円柱ブロックについてはどのように使うか把握していませんでした。
配合によっては伸びが悪く、どうしても端が欠けたりしました。
そこでサンプルを送って「こんな感じになるんですけど...」とおそるおそる確認を取ったりしていました。
聞いてみると、試験片への加工前の段階の素材としての成形品で、そのままシールするわけではので、ものによっては多少にカケは構わないし寸法公差もありません、ということでした。
通常量産品の基準で見てみると(形状はシールできるものではありませんが)とてもパスできるようなものではないので、初めのころは戸惑いましたし現場の検査班は心配そうな顔をしていました。
配合が特殊であることや、最終的な仕上げはお客様(九州大学)で実施すること、比較という観点から成形条件を揃える必要があること、などの理由で試験に影響のない程度で認めてもらいました。
その後試験結果は論文で発表されました。
西村先生はわざわざこちらに足を運んで来られて、解説もしていただきました。
そこではじめて「ブリスタ破壊」の試験片を目にしてびっくりすることになります。
そのあたりは次回に。
ではまた。
営業部 齋藤
お客様 : 九州大学水素利用技術研究センター 様
キーワード : ダンベル 配合 提案型営業
営業部の斉藤です。
前回は西村先生からのファーストコンタクトの話をしました。
今回は見積依頼の話をします。
久しぶりに連絡が来た
前回電話を切ってからというもの「いつになったら連絡がくるかなー」とどきどきしながら待っていましたが、1週間後メールで見積依頼が来ました。
内容は、
材料が4種類
① NBRカーボンブラックなし
② NBRカーボンブラックあり
③ EPDMカーボンブラックなし
④ EPDMカーボンブラックあり
これら4種類の材料それぞれに試験片を4種類
① 平角150㎜×150㎜×2㎜
② ダンベル1号
③ 短冊2㎜×1㎜×60㎜
④ 厚さ20㎜程度の方形もしくは円形
というものでした。
配合について
前回お話しませんでしたが、配合については![]()
ファーストコンタクトの時にある程度打ち合わせはしてありました。
私たちは材料を命とするゴム屋ですから、配合内容を教えるわけには
いきません。
西村先生はその点をよく理解されておられて、
「当然公開できないでしょうし、独自の配合を聞くつもりもありません」
と配慮していただいたことを覚えています。
ゴム屋に配合を聞くということは、鰻屋に秘伝のタレを聞くようなもので、
「そんなもん教えられますかいな」といわれるのがオチなのです。
西村先生からの提案は、ゴムの本に載っているような基本的な配合でいいというものでした。
それでも疑り深い私たちは、配合をすべて指定してほしいというお願いをしました。
なぜなら私たちが使っているポリマーの種類、カーボンの種類、使う薬品、などすべてがノウハウの固まりだからです。
結局西村先生の方より希望の配合をお伺いして、それに私たちから対応できるものは流用し、できないものは購入する、という形をとりました。
いい関係
この案件は大学の研究なので、論文として公開される、ということが前提でした。
したがって、閉鎖的といわれるゴム業界においてどこまでオープンにしてよいものやら戸惑いました。
西村先生はそのあたりを十分考慮されていて、
どうしたら私たちが対応しやすいか最初から気遣ってくださいました。
この点はとてもありがたかったです。
ですから私たちもどういう方法が一番いいのか考えることができましたし、気軽にご提案もできました。
売り手である私の方から申し上げるのもなんですが、いい関係ができつつあるなと思いました。
問い合わせの対応をしていると日々新しいお客様とお話をしますが、
いい仕事というのは内容ではなく、人と人との関係だとつくづく感じます。
調整大変でした
きれいごとを言っていますが、実際の調整は大変でした。
薬品の種類、カーボンの種類、試験片の形状・・・など。
当時の記録を見ると電話とメールが入り乱れていました。
まあ私がこういうことに慣れていなかったのが一番の原因かもしれませんが・・・。
幸い、西村先生がこちらのやりやすいようにしてくださいとおっしゃってくださったので、
すんなりと配合を決めることができました。
詳細を聞く
お恥ずかしい話ですが、最初の電話の時にこの試験片の目的を聞いていませんでした。
応対するのが精いっぱいでそんな余裕もなかったんだと思います。
御見積りを出すにあたって、「で、なんに使うんですか?」と聞いたくらいです。
今では使用環境や目的を尋ねるようにしています。
もちろん機密事項もあるでしょうからできる範囲でいいのですが、
教えていただいた方が私たちからの提案もできますし、仕事はやりやすくなります。
実はそこに私たちの特徴があります。
いっしょに考え最適な方法を提案するというスタイル、
つまり提案型営業です。
多くのお客様は「ゴムのことはよくわからない」とおっしゃいます。
西村先生も設備一式を揃えて自分でやってみようと検討された
ということでした。ですがその道のりを考えると、「ゴムの研究」より「ゴムを作る研究」から始めないといけないので断念したそうです。
初回の「おもしろい案件」でもお話ししましたが、入社数年の私ではとても知識が追い付きませんが、創業61年(おかげさまで4月10日に迎えました)の経験はちょっと他ではないものと自負しております。
御見積り
さて詳細はというと、この試験片を水素中に入れてどう変化するか見るのだそうです。
それがいったいどういうものか想像もつかなかったので、その時は「あーそーですか」
と返事するくらいしかできませんでした。
結果はゴムが見たこともないような変化を起こすのですが、それは別の回にお話しします。
とりあえずは予定通り、御見積りを提出しました。
3週間後に注文がきて試験片製作に取り掛かることになります。
そのあたりは次回に。
ではまた。
営業部 齋藤
お客様 : 九州大学水素利用技術研究センター 様
キーワード : ゴム材料の開発支援 オープンロール ゴム試験片(テストピース) 混練り
営業部の斉藤です。
九州大学の水素利用技術研究センターではその名の通り、水素に関する研究をされています。
その中でも西村先生の研究室は「高圧水素タンクに使用するORに適したゴム材料はなにか」というところに焦点を当て、水素がゴムに与える影響を研究されています。
私たちはその研究に使われるゴム試験片(テストピース)を作成し、納めています。![]()
はじめのうちは何が何だか分からないことだらけでしたが、
西村先生が丁寧に説明してくださるので、
今では「これほどおもしろい案件はない」と感じております。
次々と持ち込まれる「こんなゴム試験片(テストピース)がほしい」という相談をいつも楽しみにしています。
このお話をいただいてからゴム材料の開発支援ということがわが社の強みであるということに
気付きました。私たちがどういう対応をしているのか少しでも伝われば幸いです。
ある昼下がり、いつものように事務所で仕事をしていると問合せの電話がかかってきました。
内容は「カーボンを入れないゴムは作れないか?」
というものでした。
初めてのお電話にもかかわらず、ずいぶん長くお話をさせていただいたと記憶しているのですが、ポイントは次のようなことでした。
① カーボンを入れた材料と入れない材料を作ってほしい
② ベースはNBRとEPDM
③ 必要なゴム試験片(テストピース)はシート数十枚
ゴムには基本的に補強材としてカーボンを入れますので、パッキンを作っている私たちとしては
「カーボンを入れない」材料は当然のことながら作ったことがありませんでした。
(作ったところでパッキンの材料として使えないので作る必要もないのです)
まずは技術部に相談と考え、いったん電話を切りました。
作れないことはない
技術部に「カーボンを入れない材料」は果たして可能なのか尋ねたところ、「作れないことはない」という回答でした。
この「作れないことはない」というのは、作ろうと思えば作れるということなのでここは一安心なのですが、次に続くのは「そんなもん作ってどうすんねん」という手厳しい疑問でした。
この問合せがあった時期は、思い返せば懐かしいのですがHP(右図)はまだ社長の手作りで、「ゴムの試作やります!」なんてことをうたっていました。
まあどんなHPだったかのコメントは控えるとして、今とは比べるべくもない内容でした。
それでもHPに力を入れ始めていたところなので、問合せはちょこちょこ来ていました。
でもわが社としても初めての試みなので、「売上はでない」「対応も慣れない」で水面下でやっているような状況でした。
そこへ「ビッグネーム」からの問合せなので、こりゃモノにせにゃいかん、と技術部の疑問は半分聞き流しつつ再び連絡を取りました。
できます!やります!
「技術部に確認したところ対応できます」とひとまずは回答。
前向きな姿勢をアピールしました。
今でこそ社名や規模で小躍りすることはなくなりましたが、
「うちみたいな会社にそんなところから問合せがくるんやー」と考えただけでも緊張したものです。
聞けば、他ではほとんど話を聞いてくれなかったようで、自社のコンパウンド以外の配合は対応できませんと言われ、結構困っていらっしゃったようです。
わが社ではオープンロールというものを使ってゴムを練って
います。オープンロールを使ってシート出しすることはもちろんですが、配合を自社でしているので混練りをして材料を作っています。
材料は定期的に物性試験をするのでシートも作ります。
つまり、ゴム試験片(テストピース)を作る工程は日ごろの仕事としてすでに社内にあったんです。
あとは配合の問題だけで、これも今までの経験からすると「なんとかなるだろう」
というのが技術部の見解でした。
値段のつけようがない
さて、だいたいのコストと聞かれても今まで量産品のパッキンを納めていた私たちなので、
日ごろ物性試験に使うゴム試験片(テストピース)に値段のつけようもありません。
それでもこれまでの経験から概算を出し提示したところ、適正だったようで詳しい内容はまた後ほどということで、ここでひとまず落ち着きました。
1週間後ゴム試験片(テストピース)の見積依頼がきてまたてんやわんやするのですが、
それは次回に。
この依頼をきっかけに私たちはゴム材料の開発支援という仕事を始めます。
これはお客様の指定された配合で材料を練ります、というものです。
100%配合指定される場合もありますし、この薬品を入れて欲しい(ベースは大体でいい)という限定的な依頼もあります。
さらには加硫条件を振る場合もあります。
JISに規定される試験片は当然作ることはできますが、
お客様独自の試験をお持ちでゴム試験片(テストピース)が特殊形状の場合も承ります。
このあたりのお話もおいおいしていきましょう。
ではまた。